大雷神社と相馬宇多郷の神楽

大雷神社

大雷神社は、相馬市街よりおよそ3キロメートル南の坪田地区の田園の中の杜に鎮座しています。
ここでは、江戸時代から春と秋の例祭において相馬宇多郷の神楽による神楽舞が奉納されています。

大雷神社

大雷神社

《概要》

鎮座地  相馬市坪田字宮東3-2
     おおいかずちのかみ
祭 神  大 雷 神  
例祭日  6月17日(現在は、6月17日に近い日曜日)
創 立  天長三年(826)
由 緒
 霖雨(りんう、長い雨)、旱(かん、ひでり)の時は藩よりの命で宇多郡人民この社に参詣す。村落群して三日あるいは七日参籠する時は必ず験(げん、ききめ)あり。元禄年中に郷鎮守となる。参詣の日は各会所を閉じ、また刑罰を禁じたと伝えられている。また大旱魃の時は、松川鵜尾崎に神輿(しんよ、みこし)を渡御(とぎょ)し、領主、神官、僧侶及び老幼の男子供奉して雨乞いをすると、忽ちにして降雨をみたと言い伝えられたが、明治三年からこの神事は排された。
社務所  涼ヶ岡八幡神社内
宮 司  遠藤盛男 

御手神楽台敬神会

御手神楽台敬神会

《春の例大祭》

        月 日              時 刻            内 容
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宵祭り  本祭りの前日、土曜日    午後7時             式典(神事)
                        午後7時30分       神楽奉納(御手神楽台敬神会)
本祭り  6月17日に近い日曜日       午前8時            式典(神事)
                         午前8時30分       神楽奉納(6-9団体)
 

≪秋の例祭≫ 

                 月 日               時 刻            内 容
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                 秋分の日               午前8時            式典(神事)
                               午前8時30分      神楽奉納(4-6団体)

相馬宇多郷の神楽

原釜神楽保存会

原釜神楽保存会

《相馬中村藩の神楽》

 相馬中村藩は7つの郷(宇多郷、北郷、中郷、小高剛、北標葉郷、南標葉郷、山中郷)からなり、歴代藩主は、各郷に降雨と豊穣をもたらす雷神社を祀り、五穀豊穣を祈願し社前で神楽の奉納を奨励していました。その結果、各村に神楽が伝承されており、県内全体では約250ヶ所であるが旧相馬中村藩はほぼ集落ごとに約170ヶ所に伝えられており神楽の里となっています。
 
 現在でも、宇多郷(相馬市)では大雷神社、北郷(南相馬市鹿島区)では鹿島御子神社、小高郷(南相馬市小高区)では小高神社摂社の雷神社、山中郷(飯館村)では大雷神社で神楽が奉納されています。

滝神社御手神楽保存会の剣舞

滝神社御手神楽保存会による剣舞

《相馬宇多郷の神楽と県重要民俗文化財指定》

 宇多郷には、古くは今田、小田原(こだのはら)、北飯淵、近年までは和田、成田、程田、南飯淵、須萱の各地区にも伝えられていましたが、現在では以下の20団体が「相馬市神楽保存会」に加盟しています。 
 ①磯部敬神会 ②岩子神楽保存会 ③大坪親和会 ④柏崎神楽保存会 ⑤黒木敬神会 ⑥初発神社神楽保存会 ⑦涼ヶ岡八幡神社神楽保存会 ⑧瀧神社御手神楽保存会 ⑨立谷町敬神会 ⑩塚部神楽保存会 ⑪中野大蛇会 ⑫中屋敷敬神会 ⑬新田神楽保存会 ⑭新沼神楽保存会 ⑮日下石敬神会 ⑯馬場野敬神会 ⑰原釜神楽保存会 ⑱松川神楽保存会 ⑲御手神楽台敬神会 ⑳本笑敬神会
 
 岩子の神楽は、獅子神楽の記録として県内で最も古いとされており、地元に伝わる安政六年(1859)の古文書によれば、享保二年(1717)に既に岩子の神楽が存在していました。また、伊勢から招いた神楽師から住民二人が一番弟子として教わった、という言い伝えが地元に残っています。
 
 毎年春と秋に大雷神社に神楽舞を奉納している「相馬宇多郷の神楽」は、旧宇多郷の各村に伝承され神楽舞が古態を保っていることから、平成四年(1992)に福島県の重要無形民俗文化財に指定されました。

涼ヶ岡八幡神社神楽保存会

涼ヶ岡八幡神社神楽保存会

《神楽舞奉納と演目》

 大雷神社でのお祭り当日は、各地区で地元の鎮守に神楽舞を奉納し、社壇(神座、神ここでは獅子頭を安置する場所)を荷車(現在は自動車)に乗せて大雷神社に集まります。獅子頭を社殿に供えて神事を行い一同参拝します。その後神楽舞を奉納しますが、順番は以前は到着順でしたが、現在は神事前のくじ引きで決めています。なお、地元の御手神楽台敬神会は、常に最初に奉納します。
 
 神楽舞は、社前に組み立てられた二間四方の舞台で奉納されます。演目は各団体により若干異なっていますが、大略以下になります。
イ)四方固め 前かぶり一人が獅子の幕を体に巻きつけて四方を祓う
ロ)幣束舞  幣束を持って舞う
ハ)鈴舞   右手に幣束、左手に鈴を持って舞う
二)乱舞(散らし) 前かぶりに更に数人の後ろかぶりが膜の中に入って激しく舞う
 
 他に、以下のような特別の舞を加える神楽もあります。
○ 剣舞(瀧神社御手神楽保存会) 3人が剣を持って舞う
○ 太刀呑み(磯部敬神会)    獅子が案(台)の上の太刀を飲み込む
○ 毬取り(原釜神楽保存会)   ひょっとこ、おかめが毬を転がして獅子とじゃれる
○ 火伏せ(原釜神楽保存会)   獅子が天狗に退治される